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十二屋月蝕
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インスマスを覆う影にもろ影響を受け、異形の神に信仰を捧げるという話に関しては 十二屋月蝕
作中の舞台と地、本作に執筆にあたり原作を読み直してみましたが。ていると思います
状況証拠が徐々に出そろってき。続きになっているという感覚がなかなか不気味でした
それでもまだ現実を受け入れまいとする主人公の冷静ながらも錯乱した心、ているけど
。本作で活かせたかどうかは全く別の話です。理の描写が本当に素晴らしいです
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人々、温暖な気候と豊かな海に囲まれ。島々の並ぶ一帯にたどり着く、南方へと進むと、チウボッカの港から太平洋を渡り
。島の地下を掘り起こしてみようという考えを抱くことはなかった、は漁や簡易な農耕で日々を過ごしており
インドへ渡るまでの食料と水を得るための停泊、ルアイ船長はその一帯を、オリビヤ号が穏やかな諸島に初めて到着した時
時折お土産程度に木彫りの人形と金属工具を交換する、他の船もそのようにしており、事実。地程度にしか考えていなかった
、嵐が来るというのでオリビヤ号が数日にわたり島に停泊することになった時、だがある年。程度のことしかしていなかった
。ルアイ船長は島の長から話を聞いた
各島のジャックを毎年一人捧げていたそ、以前は魔物の力が強く。無人とされる島に魔物が住んでいるという、島々の一つ
今でも人々はその島を恐れて近づこ、だが。ある時から魔物の長の力が弱まり今では生贄の風習はなくなったという、うだが
と教えるよう』周囲は遠浅で波が荒く船も近づけない、土地がやせており『ルアイ船長のような遠くからの客にも、うとせず
。にしているらしい
ルアイ船長が、停泊する他の船の者より。今となってはわからない、村の長がルアイ船長にそのことを教えたのかは、なぜ
村の長は親切心でルアイ、いずれにせよ。長い付き合いを続けるうちに友情が芽生えたのか、気前よく取引をしていたからか
。船長に魔物の島を教えたのだ
積荷の。オリビヤ号が嵐に巻き込まれるまでは。近づくなという村の長の言葉を十数年の間は守った、そしてルアイ船長は
、海賊か、疫病か。無人の村だった、停泊地であるその諸島にたどり着いたルアイ船長たちを迎えたのは、大部分を捨て去り
。借金しか残らない、このまま太平洋を渡り故郷チウボッカに帰っても。更に友人を失った、積荷を失ったルアイ船長は。嵐か
。魔物の島へと向かうために。一つの可能性を求めて海にボートを下ろした、友人の忠告を思い出し、ルアイ船長は
オリ、元は漁村であった港は大きく拡張され。チウボッカは交易により栄えていた、オリビヤ号の奇跡の帰還から二十数年
更に西海岸の、交易がチウボッカの村を町へと押し広げ。ビヤ号が積んできた舶来の品々を各地の港へと貨物船が運んでいく
。いずれは連邦議会に議員を送り込めるようになる、鉄道が引かれ、町には大きな建物が並び。海運中継地へと成長させていた
。そう信じる者も徐々に増えつつあった
それどころか。ルアイ船長の前では口数が少なくなった、村の古い住人か町となってから移り住んだ新しい住人まで、82だが
その、オリビヤ号が港に着き。徐々に町を暗く重い雰囲気が包んでいった、オリビヤ号が水平線の彼方から姿を現すころから
オリビヤ号か、そして。嬉しそうな顔一つなかった、歓声一つ、宝飾品を下ろすころになっても、船倉から香料や見事な織物
。皆顔を伏せて目を合わさぬようにした、らルアイ船長が姿を現すと
妙に。村だったころからの住人も説明はできなかった、どう変わったかについて、だが。ルアイ船長は変わったと人は言う
オリビヤ号が嵐に巻き込まれて積荷の大部分を、二十数年前。低い声で言葉を紡ぐ、ややゆっくりと歩き、まばたきが少なく
チウボッカの住民、その一挙一動に滲み出す独特の気配は、だが。捨て去った時に負った怪我の後遺症だと彼は説明していた
いくらか不気、オリビヤ号の乗組員のほぼ全員が、そしてルアイ船長の纏った気配に紛れているとはいえ。に畏怖を抱かせた
修繕などを一通り行うと早々に出航して、オリビヤ号は荷下ろしと食料や水といった消耗品の補給。味な気配を滲ませていた
。チウボッカの住人はほっと胸を撫でおろすのだった、船影が水平線の彼方へ消える様子を見送ると、港から遠ざかり。いった
そして乗組員たちはチウボッカにもたらす富に対して不釣り合いなほどに恐れら、それほどまでにオリビヤ号とルアイ船長
雑、ルアイ船長を中心とする古くからの乗組員はめったに陸に上がらなかったが。乗組員への支払いはよかった、れていたが
チウボッカの町では下手。驚くほどの金額を渡されたという、用などを任される下っ端は三度の航海を経て船を降りたところ
一攫千金を夢見てチウボッカを訪れ、そして今。オリビヤ号に乗る方が一攫千金の可能性が高かった、に商売を始めるよりも
。甲板に落ちる波しぶきを拭き取る作業にいそしんでいた、た若者の一人が
それなりの賑わいを見せる町の一角で商売の手伝いや荷、転々としながらチウボッカに流れ着いた彼は、両親を早くに失い
先、それともどこかの商人の下で長く雇ってもらうか、金を溜めて商売を始めるか。運びなどをしながら日々を暮らしていた
独特な細工の宝、重苦しい沈黙に包まれた港町に。ある日オリビヤ号が帰ってきた、のことはそのうち考えるつもりだったが
それ以上にも、ルアイ船長や古い乗組員の噂は知っていたが。男は魅入られた、飾品を次から次へと下ろすオリビヤ号の姿に
雑用として乗船することを許、金を求めてルアイ船長のもとを訪れ、男は。乗組員への報酬が彼を捕らえた、たらされる富と
。された
彼は心、ルアイ船長や乗組員の側にいて滲み出す気配に晒され、四六時中。彼を日々後悔が襲った、出航したばかりのころ
檻の中の猛、サーカスがチウボッカを訪れた際に手伝いの仕事をしたが、いつだったか。臓が削れていくような思いを覚えた
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猛獣の牙が向かってくる、乗組員たちの言いつけに従っていれば、だが。獣を遠目に見たときのような本能的な恐怖があった
。彼は耐えた。報酬を受け取るため、全てはチウボッカに戻り。彼の心労はいくらか和らいだ、ことがないと気が付いてからは
彼はオリビヤ号の穂先の先に陸地が見えることに気が付い、乗組員の命令を聞きながら何十日も過ごしたころ、波に揺られ
ジャックは思わず甲板を磨く手を止めて水、海の青と空の青に四方と頭上を囲まれる日々のなかに発生した陸地の存在に。た
。平線に生じた点を見つめてしまった
「カナカ島だ「
彼は作業の手を。ルアイ船長が音もなく立っていたのだ、ジャックのすぐ後ろに。低い声が響き彼は飛び上がった、不意に
ルアイ船長の口から紡がれたの、だが。心臓を搾り潰されるような恐怖を覚えた、止めていたことをとがめられるのかと思い
。叱責の言葉ではなかった、は
「船を降りる準備をしておけ。あの島に停泊する「
彼は呆然と船室に消えていく船長の背中を。音もなく背を向けて歩み去っていった、ルアイ船長はそれだけを彼に告げると
。乗組員たちの命令に従って上陸の準備を行ったのだった、見送り
半日もあれば徒歩で一周できるほどだ。その周囲を密林が囲んだごく小さなものだった、中央に岩山がそびえており、島は
腰から下を濡ら。島へと漕ぎ出していった、ルアイ船長がジャックを含む十数名をボートに乗せ、沖合に船を停泊させ。ろう
。ルアイ船長に先導されながら密林へと足を踏み入れていく、しながらボートを砂浜へと引き上げ
。木々の間から猛獣が飛び出してくるのではないのか。周囲の木々に目を泳がせた、心臓の高鳴りを覚えながら、ジャックは
猛獣のごとき気配、数十日も。無理もない。あまり恐怖を抱いていないことに彼は気が付いた、そんな心配をしている一方で
池とは言。池を囲む集落へとたどり着いた、一行は密林を抜け、やがて。を纏ったルアイ船長や乗組員と過ごしていたからだ
池の輪郭、そして表面の泥と岸の土が混ざり合っているせいで。緑と褐色が入り混じった水は泥に近いものだった、うものの
。岸に並ぶ丸木を組んだ簡素な家屋も半ば水没しているかのように見えた、は非常にあいまいで
家屋からのろのろと人、ルアイ船長の一行が訪れたことを察したのか、一見すると打ち捨てられた廃屋のようにも見えたが
チウボッカ及びその近隣でも異国人を目にした。ジャックは一瞬声を漏らしそうになった、その姿に。影がいくつも出てきた
がっ、一方で肩や腰の幅は広く分厚く、身の丈はジャックよりやや低く。あまりに異様な風体をしていたからだ、84ことはあるが
その首の上に乗っている顔、だが。太く短い首のおかげで非常に頑強な印象をもたらされる、しりとした体つきをしている上
二つの眼球がそれぞれ別の、目など顔の左右に離れて並んでいるため、は妙に凹凸に欠けているというのに前に突き出ており
まる。その肌が淡く緑がかった褐色だった点だ、そして何より異様だったのは。方向を見ているかのような印象をもたらした
。直立するカエルのようだ、で
首や腹の皮がたるみ、高齢らしく。ルアイ船長は家屋から出てきた住民の一人に近づいた、ジャックが目を見開いていると
同様に音を、するとルアイ船長も唇を開き。妙に大きな口を開き喉の奥を鳴らすような言葉を紡いだ、皺を成したその住民は
一つはこの島に長く。その様子に妙な納得を覚えていた、ジャックは。流ちょうに行われた、二者の会話は滞りなく。鳴らす
。寄りであるという納得であった』彼ら『もう一つはルアイ船長が、通っているのだという理解で
住人の。何事かを告げた、指をジャックの方に向け、おそらく長であろう村の住人としばし言葉を交わすと、ルアイ船長は
。思わず身じろぎしていた、ジャックは突然視線を向けられたことに。ジャックの姿を見る、目がぎょろぎょろと動き
「じっとしてろ「
思わず直立不動の姿勢を取っ、彼は船の上での習慣から。低い声でジャックに命じる、すぐそばに立っていた乗組員の一人が
違和感として強烈な存在感を成、村の住人が全く瞬きをしていない事実に思い至ったことが、硬直する彼の脳裏で、だが。た
。していた
数度頷いてからジャックを含む乗組員、何らかの合意に至ったらしく、そして。更に村の長と言葉を交わす、ルアイ船長は
。彼らに向けて告げた、そしてルアイ船長は口を開き。たちを振り返った
「 ...コッ… クォポ… ゴポ「
。村の長と交わしていたのとまったく同じ音だった、それは
。思わず同じ言語で続けてしまったのだろう、村の長と言葉を交わしていたせいで
なおかつ驚くべきことに微笑んで、船長の言葉に頷き、彼の周りにいた乗組員たちは、ジャックがそう推測しようとするが
乗組員たちはめいめ、そして驚くジャックをよそに。初めて見る笑みだった、ジャックがオリビヤ号に乗ってから。すらいた
。泥から生えたような家屋へと近づいていった、い歩き出し
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頭一つ小さい住民たちに近、乗組員たちはその。ルアイ船長たちが到着したころから住民が顔を出していた、家屋の前には
そしてなんと分厚く幅広の口に自身、あるいは幅のある尻に手を伸ばす者、手を伸ばし親し気に肩や背中に触れる者。づいた
あるいは馴染みの娼婦、まるで妻、チウボッカの町では見たことの無い乗組員たちの表情や仕草は。の唇を重ねる者さえいた
。に対してのそれに酷似していた
むき出、当初。少なくとも男ではないことに、姿が見える村の住人達が皆。ジャックは気が付いた、そこまで見たところで
腰に何か巻き付けているの、無意識のうちに目をそらしていたため、股間も。しの胸部は体格や肥満によるものかと思われた
ジャックのそれより二回りは大きい太腿の、大きく肉のついた胸部は乳房としか言いようがなく、だが。だろうと思っていた
。この村の住人とオリビヤ号の乗組員の関係は、つまり。間に見え隠れする股間には突起の類はない
「おい「
オリビヤ。ジャックのすぐ後ろにいた男が声を掛けた、徐々に状況を受け入れようと内心で努力する中、彼が驚愕しつつも
。それ以来あまりチウボッカの町には降りていない、彼より数年前にオリビヤ号に乗り込み。号の乗組員の一人だ
「はい、は「
「船長の命令だ。お前は俺についてこい「
船を降りる前か、それとも。そこまでの意味が含まれていたのだろうか、ルアイ船長が乗組員たちに告げた言葉に、先ほど
ジャックは慌てて。村の方へ向けて歩き出した、乗組員の男はジャックにそう告げると。ら個別に命令されていたのだろうか
。その背についていく
「?この村は初めてだよな、お前「
「はい「
「?どうだ、正直「
「 ...どう「
、常に命じられる立場にあったため、彼とは船の上で言葉を交わしたこともあるが。ジャックは乗組員の問いかけに戸惑った
。こうして何か意見を口にすることを半ば忘れていたからだ
「最初は不気味だった、俺は「
。乗組員が応える、柔らかくなる地面を踏みしめながら、86水分を含み
「他の連中見てみろ、ほら。ぶくぶく太った連中も不気味だった、粗末な小屋も、湿った空気も地面も「
互い、いつしか身を寄せ合い、村の住民に近づき親し気に触れあっていた乗組員たちが、すると。彼が軽く並ぶ家屋を示す
。簡素な家屋へと姿を消していく、そのまま互いを抱き寄せながら、そして。の口を重ね合わせていた
「俺は寒気がした、あんな様子を見て「
「 ...はぁ、は「
二人ともども何らかの罰を下されかねないか、仮に他の乗組員に今の言葉を聞かれていたら。ジャックはあいまいに答えた
。気にする様子もなく続ける、前を進む男は、だが。らだ
「こっちのほうが性に合ってたんだ… なんというか、こっちでしばらく過ごしていると、だけどな「
「?ですか、船乗りの仕事より… 性に合ってるって「
「って意味だ、チウボッカとかあっちでの暮らしより「
「 ...こっちには何も、でも「
「考えが変わるぞ。食い物には困らない、いつもあったかくて。こっちでしばらく暮らしてみろ、だがな。俺もそう思ってた「
村のどこかの家に連れて、おそらくこのまま。ジャックは彼の言わんとするところに思い至った、そこまで聞いたところで
カナカ島、だが。ジャックも船の上という環境のため飢えていることは否定できない。を紹介されるのだろう』女、『いかれ
。欲求不満であるわけではない、の住民を抱くほど
カナカ島への上。それとも逃げるか、乗組員の導きに従い紹介された相手を適当にやりすごすか。どうしたものか、しかし
オ、この諸島は停泊地として使用されているため。彼は見ていた、近隣の島々が泳いで渡れるほどの距離にあることを、陸時
。別の船が現れるまで隠れていようか、リビヤ号があきらめて島を離れ
。彼らの前に立ちふさがった、不意に村の住人が数人、そのようなことを算段していると
「ええと… ?なんだ… ?あ「
「事情が変わった「
振。ルアイ船長のものだ。聞き覚えのある声が響いた、道をふさぐ村の住人に何か話しかけようとした乗組員を遮るように
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。背後に数人の村の住人を従えて立っていた、ルアイ船長が村の長とともに、り返ると
「こいつは、でも?事情「
「そいつは私よりも婿にふさわしい。星の巡りと骨相だ「
概ね何を言わんと、ルアイ船長の言葉の意味が理解できなかったが、ジャックには。言葉を絶って硬直した、乗組員の男が
いつしか村の住人たちは彼ら四人を囲むように包囲し、逃げようと周囲を見回すが、だが。しているかは察することができた
。そもそもオリビヤ号に乗ったところから間違いだったのだ、いや。逃げるには遅すぎた。その円を狭めていた、つつ
「ゴポッ「
十数歩は離れていたとい。ジャックにとびかかっていった、村の住人たちは俊敏に動き、村の長が口を開き喉奥を鳴らすと
。その手足を掴んで持ち上げていた、いやもっと素早く彼らはジャックに飛びつき、まるでカエルが飛び掛かるように、うのに
彼、女とは思えぬほどの握力と膂力でもって、だが。村の住人たちの拘束から逃れようとした、もがき、ジャックは声を上げ
。の抵抗は何の意味もなく抑え込まれていた
「連れていくぞ「
村の住人達はジャックを抱えあげたまま、例の喉の奥から発する言葉ではなかったが。短く命じる、ルアイ船長が手を掲げ
地面も、歩調が乱れており。一行は村を離れ木々の間へと足を踏み入れていく、ルアイ船長と村の長が付き従い。歩き出した
住人たちの手はがっちりと彼の四肢や胴を捕らえてお、だが。ジャックの身体は上下左右に大きく揺れる、平らではないため
。指が緩む気配はなかった、り
ジャックは自分たちが島の、不意に開けた視界に。ついに木々の間から抜け出た、やがて一行は傾斜する地面をしばし登り
ゆるゆると、数人の村人と自分自身が、ルアイ船長と村の長、そして。中央にそびえる岩山の麓ほどにいることに気が付いた
岩山、ジャックという神輿を上げた一行は。進む方向から悟った、流れる水に沿って岩山に穿たれた穴を目指していることを
。流れ出す水の脇を通ってその内側へと入っていった、に生じた亀裂のように見える穴から
かなりの広さの空洞が広がってい、響く水音や足音の反響から、中は薄暗いものの。ジャックを迎えた、穴に広がる空洞が
岩山の内の空洞に、外から見ればちょろちょろと今しがた入った亀裂から流れる程度だった水が、そして。ることが分かった
湛えられた水の側を進んでい、一行は闇の中、水と岩がぶつかり合う音にいくつもの足音が混ざり。は満々と湛えられていた
。不意にジャックの身体が下ろされた、脚が水を踏みしめかき分ける音が生じ、そして。88く
「! ...いて「
すべ、指先に触れるのは。闇の中彼は手で周囲を探った、痛みを堪えつつ。彼は思わず声を漏らす、尻と背中を打つ衝撃に
先ほどく、遠目に。微かに湿り気を帯びていた、手の届く範囲は平らで、少なくとも。すべとした固く冷たい石の感触だった
彼を運ん、まだ。ジャックはそちらに進めなかった、差し込む日の光がゆらゆらと水面を照らしていたが、ぐった亀裂が見え
彼らから遠ざか。黒々とジャックから少し離れた場所に立っていたからだ、そしてルアイ船長の影が、村の長、だ村の住人と
どうにか闇に眼を慣らそうとするジャッ、遠巻きにする人影を凝視しながら。空洞を満たす水に没するだろう、る方に進めば
。ルアイ船長と思しき影が腕をゆっくりと上げた、クの前で
村人も村の長もル、だが。水音はする。沈黙が残された、そして。手を打ち合わせる音が響く、岩山の空洞の内側に、直後
彼は、その理由を。身動き一つできなかったからだ、なぜか。それどころかジャック自身さえ音を立てなかった、アイ船長も
。数秒後理解した
ジャックの側へ、そして水面を突き破り何か大きなものが。割れたのだ、満々と湛えられた水が大きな音を立て、彼の背後
その先端には修道女の頭巾、だが。最初は大蛇だと思った、あまりに長く太い形から、ジャックはそれを。と身を投げ出した
水中から飛び出した尼僧が自分の傍らに身を投げ出した、妙に離れた目を見開く女の顔があったため、のようなものを被った
。ジャックは考えを変えた、のだと
。なぜ暗闇の中でこの女の顔が見えるのだろう、だが
。白目が見えないのだろう、この女の目は丸く見開かれているのに、なぜ
。首のくびれや肩の膨らみがないのだろう、女の頭巾に隠れているとはいえ、なぜ
。ジャックは気が付いた、そこまで疑問が脳裏をめぐってから
頭巾のようなものは顔の上部を覆う皮のよう、見開いているように見える黒い目には目蓋がなく、女は淡い光を帯びており
。の先端に女の顔が付いているのだ』首『当初の予想の通り大蛇の様に水中から伸びる長い、なもので
という思考がジャックの脳裏を支配し、逃げたい。彼の口からか細い笛の音のような悲鳴が溢れていた、理解が及んでから
。彼の意思に反して四肢は全く動こうとしなかった、ていたが
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事実、単に唇が開いただけのようで、言葉を紡ぐのではなく。女が離れた左右の目で虚空を眺めたまま口を開いた、すると
先端が妙に表皮の余っ、丸みを帯びており、しかしそれは舌と言うには太く。白い光を帯びた口中から舌のようなものが伸びる
。ジャックの両脚の間へとにじり寄っていく、ずるずると女の丸く開いた口から伸び、そして舌は。た窄まりとなっていた
「 ......」
恐ろし、悍ましく。ジャックから言葉を奪っていた、暗闇の中に淡い光を帯びた巨大なミミズのような舌が這い回る様子は
女の口から伸びる舌の先端、呆然とするジャックの股間の前で、そして。炎の光とは異なる光に魅せられていた、くもあるが
陰茎とは異な、しかし。包皮を纏った陰茎が勃起するようにその内側を晒す、余った表皮が大きく広がり、窄まり。が開いた
ジャックの股、青白い光を放つ触手が何十本も伸び。無数の細長いひも状の触手だった、り舌の先端の表皮の下にあったのは
脱がして、それどころか下着まで緩め、ジャックのズボンやシャツ、一本一本の触手が柔軟かつ器用に蠢き。間に襲い掛かる
。いく
「! ...やめろ、や… うわ「
ズボンを抑え、舌の先から伸びる無数の触手が、しかし。奪われそうになる衣服を抑えようとした、もがき、彼は声を上げ
ジャック、文明の証である布を奪われ、そして。と脱がせていく、シャツを握ればズボンを緩め、ればシャツのボタンを外し
。はルアイ船長とともに遠巻きに見守る村の住人と同じ姿になってしまった
両手でどうにか覆い守ってい、背中など、わき腹や胸板。彼の身体を這いまわり始めた、今度は青白く光る触手が、すると
寒さ、濡れた表面の感触や青白い色と裏腹に温かく、触手は。肌の上を這いまわっていく、る股間以外の形を確かめるように
つ、身体を震わせ、脇や太腿をくすぐる柔らかな感触に短く声を漏らし、彼は。と恐怖に粟立つジャックの皮膚を撫でていく
。細く長い触手が数本潜り込んでいく、彼の手と手の隙間から、瞬間。いに股間を覆う手を緩めてしまった
「! ...あああ「
急所に触。彼は声を漏らした、柔軟に動き回る細長い触手のもたらす刺激に。柔らかで温かく濡れた感触、陰部に絡みつく
全身をまさぐる刺。彼にはできなかった、そうすれば逃れられるはずなのに。再び手で固く覆い隠せばよい、れる触手を払い
オリビヤ号での日々。なおかつ直接的な肉棒への刺激があまりにも甘かったからだ、激にジャックの陰部は固く屹立しており
ジャッ、自身の手よりも柔らかく温かな触手の感触に抗うことは難しく、そのため。自らを慰める暇も碌になかった、は長く
。絶頂を迎えていた、90クは刺激に導かれるまま
朧、と青白く光る触手が緩く巻き付き、びくり、びくり。虚空に向けて白く濁った体液が迸る、腰が跳ね、股間が、肉棒が
そして十度ほ。冷たい地面へと音を立てて落ちていった、闇に紛れてはいるものの体液が円弧を描き、げに形を描く肉棒から
。ジャックの絶頂は治まった、どの脈動を経て
「 ...はぁー… はぁー… はぁー「
しばし身動きが取れぬほど心地よい、そして彼は。高まっていた体温がしっとりと彼の皮膚に汗をにじませる、呼吸が乱れ
青白く光る触手が彼の身体を、闇の中。正確には見ていた、いや。呆然と虚空を見つめていた、射精の余韻に身を任せたまま
彼には何をしているかよくわかっ、青白い光を纏った触手の他は闇に溶けていたが。濡れた地面の上を這いまわる様子を、離れ
。自身の放った体液を求めているのだ。た
女の口から伸びる太く長い舌へと、一本ずつ身を縮めて根元へ、触手は地面に迸った白濁をその表面に絡めとると、やがて
妙に離。口を開く女に目を向けた、舌を根元まで視線で辿り、触手が舌の先端に身を隠すのを目で追い、彼は。戻っていった
ジャックは、焦点が合っているかもわからないのに、どこに向けられているか。彼を見ていた、れた真っ黒で丸い二つの目が
。自身が見られていると察した
湛えられた水から顔までをつなぐ首に力が籠め。不意に浮かび上がった、濡れた地面に投げ出されていた女の顔が、すると
広げ、そして。彼のすぐ目の前にあった、真っ黒な二つの目が。ゆるく湾曲しながら女の顔をジャックの正面へと移す、られ
緩く。ついに触手を伸ばす先端さえもが唇の内へと飲まれていった、られた口にずるずると長く伸びた舌が引き戻されていき
だ。一片も漏れ出ていない、先ほどまで伸びていた舌が帯びていた光は。二つの目と同じく真っ黒だった、開いた口の内側は
。ジャックの目は口内の闇に引き寄せられていた、が
そのような考えが自然と脳裏に浮かび。あれほど温かく柔らかな触手を内側にひしめかせた舌がある。舌がある、あの中に
。表皮を張り詰めさせていく、徐々に膨張し、射精を経て少しだけ力を失っていた肉棒が、上がり
あるいは勃起して、並ぶ二つの眼球が彼の視線か、修道女の頭巾のような表皮に覆われた額の下。女の顔が動いた、すると
ゆっくりと、ぽっかりと開いた口をそのままに、が女の顔を濡れた地面から一度持ち上げ』首。『いく肉棒を捉えたのだろう
。開かれた女の口の先に自身の屹立があることに気が付いた、ジャックは。下ろしていく
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本来ならば払いのけるべきな、手が届くほどの距離に頭部がある今。本来ならば逃げるべきなのだろう、触手が解かれた今
。のだろう
淡。暗闇の中で屹立する分身だけがあった、ただぽっかりと開いた口と、ジャックの脳裏にはそのような考えはなく、だが
開かれた口の中へと、脈打つ屹立が、そして。自身の肉棒が徐々に照らし出されていく、い光を帯びた女の顔が下がるにつれ
。飲まれていった
「 ...あぁああ「
舌や、青みを帯びた輝きを纏う女の口内は、妙に白く。ジャックの口から溢れ出した、喘ぎが混ざり合いながら、吐息と声
、太く丸く筒状の舌が。舌肉が陰茎を歓待する、たっぷりと粘ついた唾液がたたえられており。触手と同じく熱が籠っていた
熱とともに肉棒にもたらされる刺激は、弾力を帯びた肉に唾液が絡み。とぐろを巻いて絡みつく、屹立に蛇のように巻き付き
。口から喘ぎ声を溢れ出させる、男を身悶えさせ、屹立から這い上ってくる甘い刺激の感触が。ジャックの屹立を脈動させた
。何の感情も込めずに見上げていた、真っ黒で丸い二つの目が、そして彼の痴態を
女の口内の感触に期待して、一度の射精を経て。早くもこみ上げつつある絶頂の予兆に抗った、ジャックは身体に力を籠め
先端に女の顔、文明から遠く離れた小さな島の洞穴に住み着く。彼の心の奥底では未だ抵抗感があるからだ、しまっていたが
ジャックの、彼の心の奥底の抵抗感とは裏腹に、だが。禁忌を覚えていた、精を捧げるという行為に、を備えた大蛇か長虫に
。早くしていた、絶頂に向けて脈動を強く、ただただ与えられる快感に身悶えし、分身は女の口内で舌肉に絡めとられたまま
興奮と情欲が意識の底で凝り固まっている抵抗。彼の意識を徐々に快感に塗りつぶしていく、肉棒からもたらされる刺激が
その度に、びくりと屹立が脈打ち、びくり。屹立から体液を迸らせたいという衝動で思考を煮えたぎらせていく、感を溶かし
、噴出する先走りを喉奥で受け止めながら、女の舌は。肉棒の先から先ほどの絶頂の残滓が混ざった先走りが勢いよく噴き出る
。絶頂に向けてジャックを追い詰めていった、蠢かせ、絡みつく舌肉をもぞりもぞりと波打たせ
「! ...もぉ、も、あ… あ、あ… うぁぁ「
ジャックの思考に反、指先までが不規則に。彼は全身を硬直させた、喘ぎの合間に辛うじて限界を迎えたことを口にすると
そして下腹。一層大きく膨張する、屹立に多くの血液が送り込まれ。特に下腹の奥底から肉棒までが大きく動いた、して震え
屹立の脈動と震えを抑え込もうとするかのように、絡みつく舌肉が。脈動とともに白濁が噴出していく、からの痙攣が伝わり
。白濁が注ぎ込まれていく、女の喉奥に向けて。しかし射精の勢いを止めぬ程度に締め付けた、92きつく
「 ...うぁ… あぁぁ「
洞穴に湛えられた自ら長い首を伸、一方。ジャックは目を閉ざして射精の快感を味わっていた、身体を震わせ、声を漏らし
、舌肉が波打ち。ただただ迸る白濁を喉の奥で受け止めていた、目蓋の無い真っ黒で丸い目を彼の表情に向けたまま、ばす女は
。白く濁った大量の精液を飲み込んでいく、喉奥が蠕動し
肉体の反応だけをもたらし、意識を白く染め上げ。射精の勢いも落ち着いていく、ジャックの全身の痙攣が弱まり、やがて
粘ついた白い体液を搾り出、そして屹立の先端から。冷静さを取り戻していく、徐々に弱まり落ち着き、ていた絶頂の感覚が
彼の全身、倦怠感と疲労感が穏やかな解放感とともに、二度目の絶頂を迎え。ジャックの分身は少しだけ弛緩した、したのち
。にもたらされる
「 ...はぁ、はぁ、はぁ「
肌の火照、洞穴の中の冷気と地面の冷たさが、だが。いくらかジャックの心拍と呼吸は速まっていた、連続した射精を迎え
。りを鎮めていた
「 ...はぁ… はぁ、はぁ「
女の顔をした化け物に精、二度に渡り。彼は自身のしたことを徐々に理解していた、呼吸とともに落ち着いていく意識の中
二度に渡る快感の余、しかし。禁忌感が心の奥底で再び鎌首をもたげてくる、絶頂の余韻が消えるにつれ。を捧げてしまった
ゆっくりと喉奥を蠕動させて粘液を啜りと、射精を平然と受け止め。ジャックから嫌悪と恐怖を確実に取り除いていた、韻は
。肉棒を啜られる甘い快感に浸っているだけだった、ただ。彼はいつしか怖いと思わなくなっていた、る女の顔をした化け物を
屹立がぽっか。女は唇を緩めて頭を上げた、尿道に残る白濁を吸い上げた後、まとわりつく体液を一通り舐め終え、そして
一方女。彼は小さく体を震わせた、冷気が緩く勃起する肉棒に絡みつき、闇の中。小さく揺れた、りと開いた唇の間から抜け
岩の上に新たに二つ大きなもの、洞穴に湛えられた水が揺らめき、そして。人の背丈より高く高く首をもたげていく、の顔は
その大きさは幅だけでジャックの身の丈を超え、ただ。ウミガメのヒレのようなものだった、淡い光を帯びた。が乗せられた
水面を静かに破っ、直後二つのヒレを支えに。先端から付け根までの長さは大部分が水中に没しているためわからない、ており
。て胴体が姿を現した
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し。先端がヒレと化した脚が左右から生えている、丸い頭に太い首が備わり。大きく太ったトカゲに似ていた、一見すると
そして何よ。不規則に撒かれた白い斑点が瞬いていた、トカゲと異なりその体表面は藍色の濡れた表皮に覆われており、かし
その上端から伸びる触手が女の顔、口と思われる亀裂が縦に走っており、頭部の先端には目鼻は存在せず、り異様だったのが
。に繋がっていた
ただその、ジャックは。ぼんやりと洞穴の内を照らしていた、藍色の表皮やちりばめられた白い斑点から放たれる淡い光が
女の顔を下ろしジャックの胴体にぐるりと、洞穴の岩の上に身を乗り上げた怪物が、すると。呆然としていた、巨体を見上げ
濡れてはいるものの、その表面は熱を帯びており、大蛇に巻き付かれたような圧迫感がもたらされるが。を巻き付けた』首『
。ジャックの身体を持ち上げる、に力がこもり』首『胴に巻き付く。不快感はなかった
「 ...うわ「
光を帯びる。つま先は虚空を蹴るばかりだった、慌てて脚をばたつかせるが、彼は尻の下から岩の冷たさが消えたのを感じ
見、高々と掲げられたジャックは。の先端の女の顔とともにジャックの眼下へと位置を変える』首『いつしか、怪物の巨体が
水底に向けて胴の末端や尾の、淡く光を帯びた胴体が長く長く、洞穴に湛えられた水の中。下ろした怪物の姿に目を見開いた
彼らは濡れ。ルアイ船長や村の住人の影が見えた、放たれる淡い光に照らされるように、そして。先が見えぬほど続いていた
。尊いものが姿を現したかのように、まるで。深く頭を垂れていた、た岩に跪き
。縦に刻まれた亀裂が左右に開く、頭部の先端。不意に動きを止めた、にジャックを巻き付けて掲げた怪物は』首、『すると
肉がひしめいてい、口の内側には牙や舌ではなく。白い輝きが溢れ出した、白い斑点がちりばめられた藍色の表皮の内側から
白く輝く口内の肉、ジャックは。ひしめき合う肉が襞や起伏を織り成している、狭まった穴に柔らかな肉が押し込められ。た
。陰部が固く膨張していくのを感じていた、を目にし
。あの肉穴に肉棒を挿し入れたらどれほど心地よいだろう
ジャックは胸中、長く幅広い亀裂の内側に広がる肉穴を見下ろしながら、が頼りなく細く見えるほど』首『自身に巻き付く
の先端で女の顔がジャックに目を向けていることに気が付い』首、『そしてふと顔を横に向けると。で期待を膨らませていた
そ、だが。穿たれた穴のように暗かった、自身の胴体から放たれる光を受けてもなお、真っ黒で丸い目は相変わらず黒く。た
。ジャックは肌で感じていた、こから向けられる視線が自身に向けられていることを
、と理解した時には彼の身体は浮遊感に包まれながら、が緩んだのだ』首。『胴体に加えられていた圧迫感が消える、94直後
藍色に白い斑点をちりばめた宇宙のような、いや、怪物の口。光を溢れさせる盾に刻まれた亀裂へ、闇の中。落下していった
。彼は落下していった、異形とはいえ女神のごとき存在の胎内へと、表皮を纏った
。彼の全身を柔らかな肉と粘液が受け止めてくれたからだ。痛みはない。彼の身体を衝撃が襲う、ほんの数瞬の落下を経て
人の肌よりも熱い液体と柔。彼の身体をゆっくりと包み込んでいく、持ち上げることが出来そうなほど粘ついた体液が、掴み
そして両肩から首の付け根、胸板へ、鳩尾へ、尻や背中から下腹へ。彼は安らぎを覚えていた、らかな肉に包み込まれながら
その上に闇、白く輝く肉の壁が左右にそびえ、見上げれば。ジャックは止まった、までが柔肉と粘液に包み込まれたところで
。粘液を肌に擦り付けている、熱を帯びた白い肉が細かく波打ち、そして彼の肌を。が亀裂からのぞき込んでいた
「 ...ああ「
落下、ジャックは。屹立した分身が小さく震えている、彼の両脚の間で。ため息とともに小さく声を漏らした、ジャックは
内腿に粘液を、緩く開いた脚の内側に肉襞が触れ。肉穴の内に両足を投げ出した、の際に無意識に折り曲げていた足を延ばし
。屹立の付け根で睾丸が肉襞に優しく愛撫される、無論両足の付け根にまで肉襞の蠢きは及び。擦り付けるように波打つ
。絡みついていく、擦り、彼の身体を包み込み、突起が、襞が、粘膜が、粘液が
小さく震える屹立、そして。舌のような突起を成す、両足の付け根で襞肉が盛り上がり、胸を高鳴らせる彼に応じるように
表面に滲み出す粘液が容赦なく男、肉棒に襞の起伏が幾重にも絡みつき。ジャックの分身を包み込んだ、に向けて倒れ掛かり
。ジャックの意識に流れ込んでいく、全身にもたらされる愛撫の感触とともに、蠢く粘膜の感触が、波打ち。根にまとわりつく
興奮が頭蓋の内側で膨れ上、快感が全身を貫き、身体が震え。声なき喘ぎを漏らした、亀裂の内側で身を仰け反らせ、彼は
。先端から先走りが滲み出す、激しく強まり、肉棒の脈動が心臓の鼓動とともに大きく。がっていく
執拗に膨張した亀頭を責、滲む体液を少しでも多く舐め取ろうとするかのように、襞を細かく波打たせ、亀裂の内側の肉は
。一層多くの先走りを滲ませた、強い刺激がジャックの背筋を貫き、鈴口からあふれる粘ついた雫を拭い取るたび。め立てる
「 ...ああっ… あっ… ああ「
声のような、ただ喉の痙攣に溢れ出す吐息が震え、それは。意味をなさない喘ぎ声ばかりが彼の喉からあふれる、かん高い
ジャックにとっては自身の喉から情けない喘ぎ声が漏れること、しかし。音を生じさせているだけに過ぎないのかもしれない
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。もはやどうでもよくなっていた、など
意識が支配され、自身の内側で膨れ上がっていく絶頂への期待と射精の衝動に、ただただ与えられる刺激と快感に翻弄され
。ていく
脈、快感が彼の全身を貫き。白濁が噴出する、せりあがった睾丸から尿道を通じて、下腹がうねり、彼の腰が震え、やがて
更に搾り出そうとするかのよ、覆いかぶさったまま迸る白濁を受け止め、舌状の襞肉の突起は。動とともに白濁が迸っていく
。引き伸ばしていく、強く、襞肉の蠢動がジャックの絶頂を一層長く。うに蠢いた
「!っ… !… っ「…
受け止める粘膜を突。ジャックの下腹を覆う襞肉を打ち付けた、三度目とは思えぬほどの量と勢いで、声もなく迸る白濁は
白い粘膜からにじむ粘液が、ジャックの放った白濁と、そして蠕動とともに。細やかな凹凸の隙間に染み入っていく、き上げ
。いずこかへと導かれていく、絡み合い
。そもそも考えることさえできなかった、考えが及ぶことも。自身の放った白濁の行く末などわからなかった、ジャックに
。精液を放つだけの存在となっていた。全身を震わせる、白濁を噴出させ、与えられる刺激と快感に身を任せ、ただ
白く光る肉の輝きが全てを、洞穴の暗闇が狭まり。大きく開いていた亀裂が閉じていく、のけ反る彼の視線の先で、やがて
。包み込んでいく
のけ反る彼の、だが。この大きな怪物は再び洞穴に湛えられた水に身を沈めるのだろう、胴の先端に刻まれた亀裂を閉ざし
。それですべてだった。肉に包まれる、ただ白濁を噴き上げ。自身の行く末も分かっていなかった、目は狭まる闇を見ておらず
目蓋を通じて閉ざされた、まばゆい白い光が。彼の全身を柔らかな肉が光とともに包み込まれる、亀裂が閉ざされ、そして
眼球を射抜く肉から放たれた光の区別、絶頂に伴い脳裏で瞬く白い輝きと、しかしジャックにとっては。彼の目を刺していた
。はつかなかった
脳を煮、意識を蕩かし、彼の思考力をそぎ落とし、粘液が、陰茎にまとわりつく刺激が、全身を包む肉が、絶頂が、射精が
。えたぎらせる
彼をい、亀裂の内側に閉じ込めた空気とともに、白く輝く肉は。運ばれ始めた、彼の身体が粘膜の蠕動に導かれ、いつしか
白濁を噴出させるだけの存在となったジャックを導いて。長く続く胴体の奥深くへ、深く、深く。ずこかへと運び込んでいく
。96いく
。どこかへと、大量の精液を噴出させるジャックを必要とする、少なくとも。そこがいずこか
。導かれていった、彼は